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小児急性中耳炎

小児急性中耳炎の最新の話題と実際の写真

2013年7月、小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年版が発行されました。2006年、2009年に続く第3版です。重症度判定基準、肺炎球菌迅速検査キット、肺炎球菌ワクチン、最新の起炎菌およびその感受性抗菌薬、漢方薬による治療、難治性・遅延性中耳炎に関して、新たなデータに基づく記載が変更、追加されました。当院では、常に新しい知見・治療を提供しています。

正常な鼓膜と急性中耳炎の鼓膜を写真で示します。

正常な右鼓膜

右急性中耳炎

急性中耳炎 診断と治療

急性中耳炎は、鼻やのどの炎症(かぜ等)が耳に及んでおこります。
原因菌は肺炎球菌、インフルエンザ菌などで、近年、抗生剤が効かない耐性菌が増えています。

診断

当院では、小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年版を利用して診断し、説明しています。

  1. 症状と鼓膜の状態をみて、軽症~重症を診断します。
  2. 補助的に、聴力検査(聴力低下の有無チェック)、レントゲン検査(乳様突起炎の有無チェック)等を行う場合があります。
  3. 中耳炎が長引く、あるいは治らない場合は、菌の検査を行います。

治療

  1. まず、原因である鼻とのどの治療を行います。鼻みずの吸引でバイ菌の量を減らし、抗生剤等の吸入(ネブライザー)で直接バイ菌をやっつけます。副作用の少ない治療でもありますので、頻回に治療すると症状も軽くなり、早く治りやすいです。
  2. 中等度~重症の急性中耳炎には抗生剤を投与します。当院では、ガイドラインで推奨されているワイドシリン、クラバモックス、メイアクトMS、オラペネム、オゼックスを使用しています。症状に応じて、抗生剤を変更したり、増量したりします。
    これらの抗生剤でも効果ない場合は、抗生剤の点滴を行うことがあります。幼少児は、近医小児科の先生にお願いして、点滴をしていただいています。
  3. 重症の中耳炎には鼓膜切開を行い、膿を吸い出してバイ菌の量を減らします。また、抗生剤が効かない場合、中耳炎が長く続く場合、免疫力が弱い乳幼児(2歳未満)の場合なども鼓膜切開(あるいは鼓膜換気チューブ留置)を行います。

小児の急性中耳炎は悪化しやすく、内耳炎、乳様突起炎、顔面神経麻痺などを起こすことがあります。
また、真珠腫性中耳炎など手術が必要な中耳炎が潜んでいる可能性があります。きちんと耳鼻咽喉科専門医の診断を受け、「もう大丈夫」と許可がでるまで治療をしましょう。

よくある質問

Q1. 急性中耳炎を予防するワクチンはありますか?

A1. 肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンは一部の中耳炎(特に反復性中耳炎)にも有効です。
ヒブワクチンは中耳炎に対して無効ですが、肺炎、急性喉頭蓋炎等の予防のためには重要です。

Q2. 急性中耳炎に点耳液は効果ありますか?

A2. 点耳は、高濃度の抗生剤を直接中耳に到達させることができ、抗生剤の内服より副作用も少なく非常に有効な治療です。しかし、鼓膜に穴(穿孔)がなければ無効です。急性中耳炎の90%は鼓膜に穴がなく(鼓膜がやぶれていない)ほとんど無効です。耳漏がある場合(10%)、鼓膜切開後、鼓膜換気チューブを挿入されている場合など、鼓膜に穴があるときのみ有効です。

Q3. 耳鼻科で処方される抗生剤の量は通常より多いと言われます。なぜですか?

A3. 急性中耳炎の原因菌において抗生剤耐性菌が急増している現状、抗生剤が認可された時代の投与量(常用量)では効果が期待できません。また中耳は、肺などと違って薬剤の組織移行性が悪く、むしろ抗生剤の高用量(1.5~2倍量)投与が望ましいのです。決して抗生剤の用量を間違って処方されているわけではありません。

Q4. 鼓膜切開にうまい、下手はあるのですか?

A4. まず最近では、鼓膜切開を行うことは少なくなりました。ガイドラインにもありますが、鼓膜切開を行うのは重症の急性中耳炎が中心で、軽症・中等症の中耳炎に行うことがなくなってきたからです。しかし、鼓膜切開は抗生剤が効かない場合、発熱や耳痛が持続する場合など次の一手の治療で、決してなくなることのない耳鼻咽喉科医のみができるとても重要な治療です。
鼓膜切開のうまい、下手についてですが、古くからの手術であり、耳鼻咽喉科医の間で差はないと思います。当院では、顕微鏡下に鼓膜麻酔を行い、最も安全な場所である鼓膜の前下方を1~2㎜切開します。その後、吸入器で膿をできるだけ吸い出します。痛みを伴う治療ですが、ほとんどが劇的に改善していきます。

Q5. 急性中耳炎はほとんどがウイルス性で、抗生剤は必要ないと言われたのですが・・・。

A5. ウイルス単独でも急性中耳炎は発症しますが、多くが軽症であり、ウイルス性上気道炎(かぜ)が治ると同時に中耳炎も治ります。このような軽症急性中耳炎には抗生剤は必要ありません。しかし、発熱、耳痛、鼓膜の発赤・腫れなどがあり、診療所を受診する急性中耳炎患者のほとんどは、ウイルス感染に伴う鼻咽腔細菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌など)の増殖による細菌性中耳炎であり、ほとんどが抗生剤を必要とします。
最近の2歳未満の急性中耳炎に関するデータでは、ウイルス単独感染は4%のみで、ウイルス+細菌混合感染65%、細菌単独感染27%でした。つまり、2歳未満の急性中耳炎のほとんどが細菌性で抗生剤の投与が必要であるということです。特に2歳未満児は、免疫能が低く、重症化しやすいため十分な治療と経過観察が必要です。

Q6. 1歳1か月の男の子で中耳炎を頻繁に繰り返しています。その都度鼓膜切開をされ、抗生剤を処方されます。こんなに切開ばかりして大丈夫でしょうか。また下痢がひどく抗生剤を飲んでくれません。何かよい治療法はないでしょうか。

A6. 2歳未満の小児に多い反復性中耳炎の状態と思います。鼓膜切開を何度もされたからといって将来聞こえが悪くなるなど問題になることはほとんどありません。しかし鼓膜切開であけた穴は数日で閉鎖してしまうため、十分な排膿と換気がなされず、中耳炎を繰り返す現状では、次の治療を考える時期かもしれません。ガイドラインでは、十全大補湯という漢方薬が有効とありますが、薬を飲んでくれない状況で内服させるのは難しいかもしれません。鼓膜換気チューブ留置術の適応だと思います。2歳~2歳半になるまで鼓膜チューブは留置し、鼓膜の穴が開いたままにします。その役割は、中耳に貯まった膿を持続的に排出させ、中耳内の酸素化を促進して病的粘膜を改善させます。また、点耳により高濃度の抗生剤投与が可能となります。
反復性中耳炎は、2歳をすぎるとほとんど軽快します。それまでは重症化させないようしっかり治療をしましょう。

当院で行った反復性中耳炎に対する鼓膜換気チューブ留置術

鼓膜チューブの種類

反復性中耳炎にて鼓膜チューブ留置術を行った患児(2013年3月1日~2018年10月1日)
  年齢・性 チューブ挿入日 チューブの種類
1 1才2か月女児 2013年8月19日 シェパードタイプ
2 1才0か月男児 2013年12月20日 シェパードタイプ
3 1才1か月男児 2013年12月28日 シェパードタイプ
4 1才1か月女児 2014年1月20日 シェパードタイプ
5 1才6か月女児 2014年4月21日 シェパードタイプ→Bタイプ
6 1才2か月男児 2014年6月17日 Bタイプ
7 1才0か月女児 2014年7月19日 Bタイプ
8 1才4か月男児 2014年8月22日 Bタイプ
9 1才2か月男児 2016年7月19日 シェパードタイプ→Bタイプ
10 1才1ヶ月女児 2018年7月2日 Bタイプ

手術について

局所麻酔で行います。小さな綿に麻酔薬をしみ込ませ、鼓膜の上に10分間置くだけです。注射をして眠らせるわけではありません。麻酔後、頭と体をぎゅっと押さえつけて操作しますが、メス等でほかの部位を傷つけないようにするためです。お母さん方は少しつらいと思いますが、ご理解いただいています。手術は5分~10分程度で終わります。

院内パンフレット

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